沈澱中ブログ

お笑い 愚痴

逃げ恥SP、騒ぐほど思想強くなくなくなくなくなくない?

 逃げ恥SPを観ました。「逃げ恥おもんないなー作ってる人朝鮮人フェミニスト?」という地獄を凝縮した感想ツイートを見掛けて爆笑してしまい、このインパクトにはどう足掻いたって勝てないので感想ブログは書かなくてええかなあとも思いましたが、大晦日も三ヶ日もお仕事をして頭おかしくなりそうなので、ストレス発散を兼ねて感想を書きます。プレモルを二本空けてほろ酔いなので、文章テキトーです。最近、ビール好きになりましてん。

 俺は右翼でも保守でもないが日本が好きだし、日本に生まれてよかったと思っている、けどまあ現在の与党は支持してないし、もし韓国やフランスやイギリスやインドに生まれていたら同じように「この国に生まれてよかった」と感じてたやろなーとも思ってます。また、左翼やリベラルによく見られる欺瞞に満ちた態度も、ネットフェミニストの当たり屋めいた姿勢も大嫌いですが、知人女性がフェミニストを自認していて、彼女のことはめちゃくちゃ尊敬しています。それから、自民党政権を嫌悪している友達とも、野党がだらしないと口にしてる友達とも、仲良くしてます。お世話になっている年上の方が二人いて、一人は暴力革命でしかこの国は変わらへんと言っているゴリゴリのアナーキスト、もう一人は朝日新聞社民党が大嫌いなゴリゴリの右派ですが、二人とも心底尊敬しています。そういう人間の感想だと思って、以下読み進めてください。

 逃げ恥SPの感想、言いたいことは五つある。

一、ガッキーが可愛い。

ニ、石田ゆり子がお美しい。

三、西田尚美がお美しい。

四、前半でみくりの妊娠が診察によって確定し、婚姻届を提出した帰り道、平匡が「子どもが産まれるにあたって、僕は全力でみくりさんをサポートします。何でも、遠慮なく言ってください」と発言すると、みくりは「違う!サポートって何?手伝いなの?一緒に親になるんじゃなくて?私だって子供産むの初めてで、何にも、どうなるか不安なんです。それなのに、私が一人で勉強して、平匡さんに指図しないといけないの?一緒に勉強して、一緒に親になって、夫婦ってそういうことじゃないんですか」と返すが、これはほぼ難癖だ。「〜にあたって」は「〜の前段階において」という意味で用いられることが大半であり、「サポートします」の目的語は、子育てではなく妊娠・出産だ。確かに、一緒に親になるべきという考え方は正しいが、妊娠も出産も女にしかできない以上、男が「子供が産まれる前段階において」できることは、所詮サポートに過ぎない。つわりの苦しみを真に理解することも代わることも、男にはできない。つわりに苦しむ妊婦の代わりに買い物をしたり、家事をしたりすることしかできないのだ。平匡はそういう申し訳なさと妊婦への敬意を込めてサポートという言葉を使った可能性もある訳で、「産まれてからは、サポートじゃなくて一緒に勉強して、一緒に親になるんですよ。分かってますよね」くらいの返答で済ませばいい話だ。「みくりさんが一人で勉強して、色々僕に指図してください」なんてことを平匡は一言も言っていないのに、「私が一人で勉強して、平匡さんに指図しないといけないの?」と問うのは、ネットフェミニスト(だけじゃなく、ネット論客)がよく使う「相手の言っていないことに反論する」という手法で、美しくないから俺は嫌いです。

 そして、本題の五つ目は、「逃げ恥SP、別にそこまで思想強くねえよ!」だ。フェミニスト/ポリコレ/リベラルの押し付けだー!プロパガンダだー!胸焼けするー!とTwitter等で騒がれており、俺はドラマを観る前にちらとそれらを目にしてしまっていたので、一体どんなもんかと思っていたら、別に大したことはなかった。選択的夫婦別姓も育休も無痛分娩も、入籍や妊娠・出産を控えた夫婦が直面し得るごく普通の課題だ。妊娠して入籍した夫婦を主人公に据えたドラマがそれらを描くことに、何の不思議もない。また、同性婚が認められないことの弊害も、今ここにある課題だ。同性愛者と打ち明けたときに相手がどんな反応を示すか怖いといった描写も、思想が強過ぎるなどと騒がれるほど大層なことではない。あのドラマを観て思想が強いだのプロパガンダだのと騒ぐ人は、日頃どれほど現代日本が抱える社会の課題から目を逸らして生きているのだろうか。ナイーブ過ぎる。うぶ過ぎる。

 そもそも、みくりと平匡は「妊娠して子供ができた以上は入籍しなきゃね」「森山姓か津崎姓かどちらにしようか。でも、森山みくりには兄がいるけど、津崎平匡は一人っ子だから、津崎姓にしようか(フリーランスとしての仕事云々の話は、第二の理由として挙げられていた)」と決断する訳だが、これらの考え方は、いわゆる日本の保守的思想に沿ったものだ。別に妊娠したって入籍する必要はないが、みくりと平匡は、妊娠→入籍の流れを割と当然のものとして受け入れている。また、選択的夫婦別姓を求めて裁判を起こしたりもしない。兄がいるから、一人っ子がいるから云々という話をしていることからも分かる通り、家制度に全く縛られない、完全に自由な考え方をしている訳でもない。

 みくりと平匡は、自分達の頭で物事を考え、受け入れられないものには極力従わないが、時には折れることもある人達だ。あえてこの言葉を使うが、「普通」の人達だ。リベラル、フェミのプロパガンダだ!という意見は、もう一度言うが、ナイーブ過ぎる。

 俺は前評判を目にして、「夫婦同姓など男尊女卑!アップデートできていない!人権意識が低い!そもそも、婚姻制度自体廃止すべき!」くらいのことをみくりさんが言っているのかなと思いきや、「婚姻とか姓もそれなりに大事にしてるけど、夫婦別姓の選択肢すらないのは嫌よねー。育休も大事よねー」という、よくいる人達のお話でした。三回目になりますが、これで騒ぐのはナイーブ過ぎます。

 選択的夫婦別姓、とっとと認められるといいですね。ただし、「夫婦同姓にする夫婦は遅れている!意識が低い!」という主張は、「夫婦別姓は家族の絆を破壊する!日本を壊す!」という主張と同じくらいダメということは、各自胸に抱いておきましょう。俺の恋人は選択的夫婦別姓に賛成してるけど、「もし結婚したら俺君の苗字になりたい」つってます。ええでしょ。惚気ですわ。終わり。