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お笑い 愚痴

格好良いコント10選

お笑いについて書く、時々愚痴も書く……というコンセプトのもと始めたブログなのに、愚痴ばっか書いているので、ここらでお笑いの感想を書きます。俺の好きなコントベスト10を書こうと思いましたが、流石に絞り切れなかったので、かっけー!と思ったコント、俺の美的感覚で言えばお洒落なコントを10本選びました。順不同です。

 

1.天竺鼠「将棋」

中2のとき、オールザッツ漫才2012で観て衝撃を受けた。頭に将棋の飛車の駒の被り物を着け、縦方向に進みながら出てくるタキシード姿の瀬下。頭に角行の駒の被り物を着け、斜めに進みながら出てくるウェディングドレス姿の川原。カタコト神父の「健ヤカナルトキモ、助ケ合イ、イツマデモ愛シ合ウコトヲ誓イマスカ」という問い掛けに、瀬下は「ひしゃ、ひしゃ」と答えるが、川原は「……はい」としおらしく答える。この辺のいかにも川原っぽいボケも、くすぐりとして効いている。

そして、Bruno Mars「Runaway Baby」が流れ始めると、瀬下は縦方向に、川原は斜め方向に動き出す。世界観の意味不明さと駒の動きに準じて動く律儀さに爆笑していると、サビの部分で二人は後ろを向き、「龍王」と「龍馬」に成り、一緒にボックスステップを踏み出した。この瞬間俺は、猛烈にお洒落やなと感じた。

このコントの一番楽しい見方は、「それまでお互いバラバラの動き方をしていた飛車と角行が、龍王と龍馬に成り、苗字が同じ夫婦と成ったことで、縦横無尽に動けるようになったんやな!二人一緒なら、一人ではできないこともできるし、大きな幸せを得られるっちゅうメッセージやな! ……はあ?」だが、当時の俺はそこまでは考えず、シンプルに将棋の駒を着けた二人が超絶お洒落な曲で踊っているという意味不明さに笑い、感動した。音楽の力は強い。もちろん、このコントに「Runaway Baby」を選曲した川原のセンスも素晴らしいです。

 

2.バナナマン「secondary man 」

バナナマンは作家としても演者としても剛腕という意味で、コント界のクリント・イーストウッドだと思っている。そんな彼らの2019年単独ライブのオープニングを飾ったコントです。

親分を亡くした同格のマフィア二人は、どちらが次のボスになるか、敵のアジトに突撃するための作戦をどうするかなどについて、侃侃諤諤の議論を繰り広げる。濃いオレンジ色のスーツを着た設楽と鮮やかなイエローのスーツを着た日村のビジュアルは、格好良いだけでなく、妙に収まりが良い。バナナマンが売れっ子芸人として活躍していないパラレルワールド日本で、このビジュアルの二人組がアニメや映画にキャラクターとして登場すれば、瞬く間に人気が出るやろなあと想像できる。

設楽は会話の中で上手い具合に日村を誘導し、コントは粋な小噺のようなオチを迎える。キャラクターとしての二人の関係性とバナナマンの二人の関係性がよく似ている、でも微妙に違うという絶妙な塩梅で、まさに近松門左衛門が唱えた「芸は虚実皮膜の間に漂う」という価値観を体現しています。歌舞伎も浄瑠璃も全然知らんけど。

ベテランの堂々たる風格を見せつけつつ、コント師としての軽やかさも備えた、クールな一本です。

 

3.チョコレートプラネット「業者」

観ましょう。https://youtu.be/UydyLvybRlU

キング・オブ・コント2014で披露され、シソンヌに惜敗するも、爆笑問題や萩本家の欽ちゃんにも絶賛されたネタです。

まず、設定が抜群です。映画や小説や漫画では「奇を衒っとんなあ」と鼻白んでしまうであろう、まさにコントでこそ映える発想です。多分、星新一がこの題材でショートショートを書くより、チョコプラがコントで表現した方が面白い。長田のいかにも業者っぽい演技が巧過ぎて、この前携帯会社で機種変更した際に延々とよう分からんプランの説明をされたとき、このコントを思い出しました。余韻を残さないけれどずしりと響くようなオチのセリフの言い方も格好良い。

現代風刺的な読み解き方をしようとすればいくらでもできそうですが、抜群の題材を思い付いた発想力と、その魅力を損なうことなくコントとして拵えてみせた、チョコプラの二人の力量の高さを絶賛するに留めたいです。「コントの鍋を煮込んで煮込んできたのに、突き出しで出したモノマネとかキャラで売れちゃった」と「あちこちオードリー」で語っていましたが、チョコプラコント師としての実力、どんだけ〜。

 

4.さらば青春の光「臓器売買」

観ましょう。https://youtu.be/x8J_eTmIa5E

これもチョコプラの「業者」同様、コントが一番表現媒体として適している内容だと思います。世にも奇妙な物語にありそうだし、筒井康隆が書いていそう。でも多分、世にも奇妙な物語で放送されるより筒井御大が書くより、さらば青春の光がコントとして表現する方が面白いと思います。コントの特性の一つとして、嘘臭い設定でも気持ちが離れてしまわない、というのがありますよね。作家の花村萬月さんが「とんでもない偶然や出鱈目は現実にある。でも小説は虚構だからこそ、整合性の取れた嘘で塗り固めなければならない。じゃないと、ご都合主義だと思われてしまう」といった趣旨のことを仰ってましたが、コントや漫才は完全な虚構ではなく虚実皮膜、ざっくばらんな言い方をしてしまえば「どうせ作り物のネタやし」という俯瞰の視点がどうしても完全には拭い切れないからこそ、あり得ない設定や嘘臭い設定にもむしろ能動的に乗っかっていけるのでしょう。

さらば森田の持つあっけらかんとした乾いた狂気が格好良い一本です。

 

5.シティボーイズ「灰色の男」

名作公演「愚者の代弁者、西へ」に収録された一本。ゴッドタンでゾフィー上田が紹介した際、東京03飯塚が「あれは名作だよね」と言っていたのが印象的。

幼女誘拐殺人の容疑者として送検されるも無罪判決を勝ち取ったサカキバラ(斉木しげる)を団地から追い出すべく、ニシオカ(大竹まこと)とツジ(きたろう)は家を訪れる。サカキバラを追い出せという団地の連中に反発を覚えつつも、無罪のサカキバラが無実だとは信じ切れていないニシオカ。サカキバラに悪意と敵意と好奇心の混じった視線を向ける、小市民の嫌なところを凝縮したようなツジ。東京03飯塚はこのコントのきたろうを「クズ」と評していたし、それはその通りなのだが、でもツジ(きたろう)的な要素は絶対にどんな人間にもある。だからこそ、それを包み隠さず全身で嬉々として表現するツジのクズっぷりを観て、笑ってしまうのだ。

このコントで最も爆発的な笑いが生まれるのは、物腰の柔らかいサカキバラがほんのごく僅かな癇癪を見せた瞬間だ。ニシオカとツジは恐怖に慄いた表情をするが、観客は反射的に笑ってしまう。殺人鬼の本性が垣間見える……ってほどじゃない、誰でも起こし得るちょっとした癇癪だが、物腰の柔らかかったサカキバラがそれを見せた瞬間、つい「あ、こいつホンマは殺してるわ」と思ってしまう。一度誰かを灰色の男と見做すと、怪しい素振りや怖い素振りが見られれば「ほら、やっぱクロや」と思ってしまうし、穏やかだったらそれはそれで「逆に怪しい」と思ってしまう。人間の嫌な部分であり、しょうがない部分だ。

笑いとは緊張の緩和、緊張が和らいだときにその落差で人は笑う……とさんまや松っちゃんがよく言っていますが、コント内のキャラクター(大竹/きたろう)にとっては緊張が高まって笑えない状況なのに、外側で観ている観客は笑ってしまう……というこのコントのような笑いの取り方の方が、俺は好みです。当事者にとっては気まずい状況や嫌な状況だけど、外側から見ていると笑ってしまう、っつーやつですね。玉田企画という演劇ユニットがこれをコンセプトにしているらしく、去年配信で視聴した「今が、オールタイムベスト」という公演もオモロかったです。

シティボーイズ、公式YouTubeチャンネルの開設を検討してくれ!

 

6.シソンヌ「インドカレー

観ましょう。https://youtu.be/N6fgYfBF_ik

インド映画の愛好家として、色んなインドカレー屋によく通う者として、東北訛りの抜けきっていないじろうのインド人にはリアリティを感じないのですが、でも何故か違和感なく観られてしまうのが凄い。俺が知らないだけで、日本の何処かにはこういうインドカレー屋もあるかもな、と思えてしまう。じろうの誇張し過ぎていないカタコト感とか、レジからお釣りを取るときに小銭の音が微かに聞こえるところとか、ちょうどいいインドカレー屋っぽいBGMやレジの布とか、積み重ねられたリアリティがコントに厚みを出してるんでしょうな。

2分以上経ってから巻き起こる爆発的な笑いを皮切りに、小気味好いテンポでお洒落なオチへと突き進む訳ですが、日常のワンシーンを切り取ったようなミニマムな雰囲気、コントの前にもその先にも各々の人生があるのだと想像させてくれる豊かさ等、とても良いです。

ワイドナショーに出演した優勝直後のライスに対して、松っちゃんが「大丈夫か?シソンヌ感、えぐいよね」と言っていた。松っちゃんは大好きだし、シソンヌにもライスにもエールを送る意味でのボケだというのは分かっているけど、反射的に「シソンヌ最高やろ!マスが全てやと思うなよ」とイラつく程度には、シソンヌが好きです。

 

7.チョップリンティッシュ

観ましょう。https://youtu.be/mIAXRe11VHk

あまりにも過小評価されているコンビ。現在は、ザ・プラン9に加入しています。

出荷予定のティッシュ箱を一度開封して、中身を「大丈夫なやつ」と「大丈夫じゃないやつ」に仕分けするというコントで、あり得ない設定のあり得なさの度合いが気が利いていて格好良い。絶対にあり得ない、という設定も好きだが、この手の不合理や無駄は世の中に氾濫しているよなあという部分で共感できてしまう塩梅が絶妙だ。

意図したものかは分からないが、コント中一度も「ティッシュ」という単語を使わない辺りも、ソリッドな感じがして美しい。「大丈夫」という言葉が何度も何度も用いられてコントを埋め尽くしていくのは、水玉や網目でキャンバスを埋め尽くすことで図と地を反転させ、異様な迫力を醸し出す草間彌生の諸作を彷彿とさせる。どうですか、コントを評するのに草間彌生の名前とか出しちゃう感じ、鼻につくでしょう?

ともかく、今はなき京都・祇園のフォーエバー現代美術館で開催された草間彌生の南瓜展で、和室に飾られた作品を目にして鳥肌が立ち、何十分も棒立ちのまま飽きることなく見続けたときのように、チョップリンティッシュ」はどれだけ観ても飽きることはありません。コント史に残る名作です。

 

8.ラーメンズ「名は体を表す」

観ましょう。https://youtu.be/vAEitV5SPn0

彼らの単独公演の最高傑作は、最後となった『TOWER』だと思っている。中でも「名は体を表す」は、漫才にするには些か弱いけどキャラクターの乗っかったコントなら抜群に面白い上質な会話劇から始まり、「たかしとお父さん」的な片桐仁の馬鹿馬鹿しい一人芝居へと雪崩れ込んでいくシームレスな美しさが堪らない。

「こいつらの上品でお洒落ぶったニヤニヤ笑いなんかより、泥臭い大笑いの方がよっぽど価値があるわ!」的な切り口のラーメンズ批判を何度も目にしたことがあるが、ラーメンズのコントって腹抱えて笑えるシーンもめちゃくちゃありますよね。言葉遊び的な面白さから身体的な笑いの取り方まで、実に幅広いコンビです。つくづく、小林賢太郎の引退が惜しまれますな。

 

9.HITOSHI MATSUMOTO VISUALBUM「巨人殺人」

ダウンタウン松本人志が作ったオリジナルコントビデオHITOSHI MATSUMOTO VISUALBUMに収録された一本。関(松本)、稲葉(板尾)、アキ(木村)、太一(今田)の4人は、長い付き合いの坂東を憎み、アキの知り合いのシン(東野)も誘って殺害計画を立てる。だが坂東は、奈良の大仏に匹敵する巨人で……といった内容。坂東が巨人であることに、特に説明や留保がなく進むのがクールだ。シュールな発想、底辺の屑達を描いた土着感のある短編ノワールのような味わい、板東と関のベタな言葉のやりとりなど、松本人志が持つ魅力が凝縮されている。特にハマり役は稲葉(板尾)で、あまり坂東の殺害計画に乗り気でない発言をしているが、その実一番強い殺意を抱いているように見えるのが素晴らしい。

このコント然り、『大日本人』然り、リンカーンの巨大化シリーズ然り、「過剰にデカい」のを松っちゃんは面白いと思ってる節がある。俺もそう思います。

 

10.永野「顔面を負傷して再起不能と言われた五木ひろしが東京ドーム公演で復活するところ」

タイトルで内容を説明してしまうライトノベルや火曜サスペンスは好きではないが、永野のタイトルそのままのコントは大好きだ。

ネタパレで永野は満面の笑みでタイトルを述べたあと、一度袖にはけ、青いタキシードに無表情の白い仮面という姿でオートバイに乗ったマイムをしながら登場した。BGMは五木ひろしの楽曲ではなく、ロックンロール。舞台上を縦横無尽に駆け回ったあと、バイクから降り、ドラムの乱打音に合わせて飛び跳ねる永野。仁王立ちで息を弾ませながら、左右の観客席に向かって五木ひろしお馴染みの拳を握るポーズをしてみせると、左手を高く突き上げて人差し指で天を指す。歓声が鳴り響き、新たにアップテンポなギターのフレーズが流れ出すと、永野は白い仮面を剥ぎ取ろうとする。顔が見えそうになったその瞬間、緞帳が降りてコントは終わる。

アウトレイジ・ビヨンド』を思い出させるほど唐突で鮮やかな終わり方に、猛烈な格好良さを感じた。永野が五木ひろしのポーズをしたとき、ネタパレ観覧ゲストの陣内が「これはアカン」というツッコミを入れていたが、別に永野はこのコントで五木ひろしを単純に揶揄している訳じゃない。もちろんオモシロの対象として消費しているから、五木ひろし本人が気分を害したり馬鹿にされていると思う可能性はあるけれど、同業者の芸人がネタ中に「これはアカン」なんて二元論的なツッコミを入れるなよ。アカンかアカンくないかの二択しかないんか。アカン警察はダウンタウン×ナインティナイン14年ぶりの共演を唯一の功績として、もうとっくに終わっとんじゃ。明石家さんま筆頭にお前ら関西芸人って、結構そういう二元論的なとこあるぞ!……と俺も二元論的なことを思いました。あと、陣内のネタってディアゴスティーニ以外にもたまにつまんないのあるよねってのと、ヒルナンデス!の街ロケで「丁字路」と言ったおじいさんに対して「てい字路?www Tじゃなくて? てい字路?www」と笑っていたのだけは、ニューヨークを憎み続けるパンツマンのファンと同じくらいの熱量で忘れません。永野のコント中、一言も喋らずに笑顔を浮かべていた千原ジュニアを一層好きになりましたよ、俺は。

ところで皆さん、ちゃんと永野のYouTubeチャンネルは登録してますか? 月額980円で、「ウエノシンイチ」を筆頭に、VISUALBUMに匹敵する不愉快な面白さを描いたコントを観られます。オススメです。結局、どんな芸人よりも永野が一番面白いんじゃないかと思うことがよくあります。ラッセンよりピカソゴッホの方が俺は好きなんで、そこくらいです、永野と意見が合わんなあと思うのは。

以上、私的・格好良いコント10選でした。終わり。